書評『やってのける 意志力を使わずに自分を動かす』ハイディ・グラント・ハルバーソン著
久々に素晴らしい内容の本だったので、書評と言うか自分へのメモを残す。
面白い内容だったため、会社の昼休みに読んでいたところ、表紙に「努力できるのも才能?いえ、努力なんて、誰でもできます。」と赤文字で書いてあるのを同僚が見て、「努力できるのも才能でしょー」と言われた。
確かに今までは自分もそう思っていたし、上司や同僚などもそれが正しいと思っているからこそ、言ってくるのだろう。でも、そんな考え方が変わる本。心理学的な裏付けもしっかりしていて(著者は心理学者)、なんだか影響力の武器を彷彿とさせる話の筋道だった。
シンプルな計画をつくる
書きたいことは山ほどあるが、この本を読んでいて一番重要な部分は、シンプルな計画をつくることだと感じた。
著者のハルバーソン氏も次のように書いている。
もし、本書の内容のなかから、目標達成のためのアドバイスを一つだけ選べと言われれば、わたしは「いい計画をつくること」と答えます。
そして、第9章に出てくる、心理学者ゴルヴィッツァーが学生を対象に行ったある実験のエピソードがとても興味深かった。少し長いが引用させてもらう。
クリスマス休暇をどう過ごしたかについての詳しいエッセイを、帰省先で書くよう依頼します。投函期限は、クリスマス当日から48時間以内です。
半分の学生のみに、もう一つ指示を出しました。エッセイを書く予定の時間と場所を具体的に決めてもらったのです。学生はその場で時間と場所を紙に書き、ゴルヴィッツァーらに渡してから、試験会場に向かいました。
クリスマスから数日後、ゴルヴィッツァーらのもとにエッセイが届き始めました。エッセイを書く場所と時間を決めなかった学生、つまり、計画を作成しなかった学生で実際にエッセイを送ってきたのは、わずか32%でした。
一方、書く時間と場所を決めるという、ごくシンプルな計画を作成した学生は71%もエッセイを送付してきました。計画を作らなかった学生たちの二倍以上の数値です。
わたしは腰が抜けるほど驚きました。簡単な計画をつくるという単純な介入によって、被験者の目標達成率が二倍になったのです。
これにはかなりビックリした。そして、『この方法めちゃくちゃ使えるじゃん!』とも感じた。「いつ、どこで、どのように」行動するのかを決めることで、目標達成率が飛躍的に上がるということ。
やればできると考えていることは、結局先延ばしにしてしまって、ずるずると時間だけが過ぎる。「明日でいいや」ではなく、「○○日の○○時から残りのタスクをこなす」と目標を立てるべきだということ。
より具体的に、シンプルな計画を立てることが最重要。ただし、達成の見込みが低い目標は逆効果になる。そういや、カイジの遠藤も言ってた。届かないゴールにうんざりするのは負のスパイラルにはまる。
(賭博黙示録カイジ第1巻より)
楽観するか、悲観するか
もう一つの重要な要素は、獲得型 or 防御型の目標設定と証明型or 習得型の目標設定について。これが本書の肝となる考え方。
獲得型は称賛によってモチベーションを高め、困難に直面するとあきらめやすくなります。防御型は批判によってモチベーションを高め、困難に直面しても簡単にはあきらめません。
- 獲得型 … 「手に入れたいもの、達成したいこと」に注目
- 防御型 … 「守るべきもの、しなければならないこと」に注目
難しい目標(禁煙、減量)に取り組むには、まず獲得型のアプローチ(達成によって得られるメリットに注目する)で達成を目指し、達成後は防御型のアプローチに切り替えること(得たメリットを失わないことに注目する)。
なんか書きたいことが書ききれていないので、そのうち追記するかもしれない。
まとめ
やりたいこと、やるべきことは分かっているのに、なぜか腰が重い、という方はぜひこの本を読んで目標設定することをオススメする。